はじめに
ふとしたときに気分を変えるためにキーボードを変えたいと思い、Keychron K2 ワイヤレス・メカニカルキーボードを購入しました。メカニカルキーボードの使用感を感じていましたが、慣れないこともあり使いにくさを感じてしました。
もっと自分に合ったキーボードが無いかと思いキーボードのことを色々と調べていたところ、キーボードを自分で作ることができるということを知りました。個性的なキーボードが様々作られていることを知り自分も作ってみたいと思い、作ることにしました。
今回の記事ではキーボードを作るにあたって調べたキーボードの構造や種類、実際にキーボードを設計・製造した手順などを紹介していきたいと思います。
キースイッチによるキーボードの分類
キーボードのうち、指で押し込む部品をキースイッチと呼びます。キースイッチの種類によってキーボードを分類することがあります。
ここでは4種類紹介しますが、こちらの方が詳しいので、詳細を知りたい方はこちらを参照してください。
- メカニカル
- スイッチの内部に機械的な接点があるスイッチです。
- 自作キーボードというと一般的にメカニカルキーボードのことを指すことが多いです。
- スイッチ1個あたりは高価ですが、部分的な修理や入れ替えが可能で、多くの種類が流通しています。
- メンブレン
- メンブレンシートに接点を含めているスイッチです。
- 大量生産に向いているため一般的に最も流通しているキーボードです。
- 基本的には修理が難しいです。
- パンタグラフ
- 電車のパンタグラフのような構造のスイッチです。
- 薄く作ることが可能であるため、ノートパソコンや薄型のキーボードに採用されています。
- 静電容量式
- 機械的な接点がなく、スイッチを一定レベル押し込めば電気的に接続される方式です。
- 押し込むときの荷重を選ぶことができます。
- 高価ではありますが、故障が少なく長期間使うことができます。
メカニカルキーボードの構造
自作キーボード界隈では一般的にメカニカルキースイッチが採用されており、特に断りが無ければメカニカルキーボードを作成している方が多いようです。ここではメカニカルキーボードの構造を紹介します。
まず最低限、以下の部品があればキーボードとして動作します。
- PCB (Printed Circuit Board)
- 回路が実装されたプリント基板です。
- 押されたキーの判別など、さまざまな機能を持ちます。
- PCBにはキースイッチ、マイコンといった部品が実装されています。
- キースイッチ
- 押し込むと電気的に接点が繋がる部品です。
- マイコン
- 押し込まれたスイッチを特定して、PCに押されたキーの情報を送信します。
- その他にもLEDを制御するといった機能を持たせることもあります。
- ケーブル
- キーボードとPC間を接続します。
- 無線の場合はPCへの通信のためであれば不要ですが、バッテリーへの充電のときには必要になります。
もちろん最低限の部品しかないと使いにくい、故障しやすい、見た目が悪いといった問題が出てきてしまうので、以下のような部品も組み合わせることで一般的なキーボードの構造とします。
- キーキャップ、キートップ
- アルファベットなどが印字されていて、一般的なキーボードでは直接押下する部品です。
- キーキャップという呼び方のほか、キートップという呼び方もあるようです。
- スタビライザ
- スペースキーのようなサイズの大きなキーキャップを支えるための部品です。
- 大きなサイズのキーの場合、スタビライザがないとキーを押し込んだときにキーが真っ直ぐ下がらず斜めに下がってしまい、キーを正確に押すことができないことがあります。
- トッププレート
- キースイッチを支えるプレートです。
- トッププレートの素材や厚み、ネジ留め箇所によって、キースイッチを押し込んだときの打鍵感が変わります。
- ボトムプレート
- PCBを保護するプレート、ケースです。
- これによってPCBが直接机や手に触れることなく、PCBの損傷を防ぐことができます。
その他、求める機能に応じて様々な部品が追加されることがあります。
- バッテリー
- 無線の場合には必要になります。
- LED
- 見た目に綺麗なだけでなく、キーボードの状態(接続済み、充電中など)を示すために使用されます。
- 様々な色に光るRGB LEDはゲーミングキーボードなどに良く採用されています。
- ロータリーエンコーダ、ノブ
- 回して操作することでPCの音量調節などに使われます。
- ディスプレイ
- 販売されているキーボードでは珍しいですが、自作キーボードでは小型のディスプレイを付けることがあります。表示する内容は様々です。
- OLED (Organic Light Emitting Diode, 有機ELディスプレイ) などが採用されるようです。
キーボードのサイズ(キー数)
キーボードには様々なサイズがあり、一般的にはキー数に応じて%(パーセント)で表されます。ここでのサイズとは、キーボードの厚みや重さではなく、キー数の目安を表しています。
一般的には以下のようなサイズのキーボードが作成・販売されています。
- 100% (フルサイズ)
- テンキー、矢印キー、ファンクションキーまで全てのキーが揃ったキーボードです。
- デスクトップPC付属のキーボードなどに採用されます。
- 80% (テンキーレス)
- フルサイズのキーボードからテンキーを除いたキーボードです。
- 75%
- 80%キーボードから更に矢印キーなどを除いたキーボードです。
- ここまでのサイズであればノートパソコンでも良く見かけるサイズかと思います。
- 60%
- 75%キーボードからファンクションキーを除いたキーボードです。
- 自作キーボード界隈では最もメジャーなサイズとされているようで、キットやケースの流通も多いようです。
- ファンクションキーや矢印キーなどは複数のキーの同時押しで対応することになるので、慣れるまでは使いにくいかもしれません。
- コンパクトなキーボードなので、デスクを広く使える、持ち運びやすい、指の移動が少なくなるといったメリットがあります。
- 40%
- 60%から数字キーを除いたキーボードです。
- 数字キーを押したいときは複数のキーの同時押しなどで対応することになります。
- 左右に分割されたキーボードは40%で作成されることが多いようです。
- その他
- テンキーパッド
- テンキーだけのキーボードです。
- マクロパッド
- マクロパッドはキーボードのサイズというよりも、キーボードの機能による分類で、マクロ機能に対応したキーボードです。
- マクロ機能とは、1個のキーを押すと複数のキーが押されたように動く機能です。 <例>キー「1」を押す ⇨ 「Ctrl」+「Alt」+「1」の信号をPCに送る。
- 予め定められたマクロだけでなく、ユーザが自由にマクロを設定できる機能を持ったものもあります。
- テンキーパッド
部品の設計・製造
キーボードを実際に作るにあたり、トッププレート・PCB・ボトムプレートなどの一部の部品は自分で設計して、製造する必要があります。
私の自作キーボードでは、企業ではなく個人の範囲で、少量を製作していきます。そのため製造用の機械を購入しても稼働率が低くなってしまうため、費用に見合った使い方はできません。
また初めて作成するものが多いため、調べながら試行錯誤しながら進めることになります。そのため可能な範囲でPC上で試行錯誤できる状態にしたいです。
以上のことから、設計・製造の方法は基本的に以下のような方針で実施していくこととしました。
- 設計は自分のPCで、安価・無料のツールを使用して行う。
- 製造は各種製造サービスを利用する。組み立ては自分で行う。
- ソフトウェア開発は自分のPCで、安価・無料のツールを使用して行う。
大まかに調べたところ、以下のようなツール・サービスを使用することで設計・製造を進めることができそうです。
部品名 | 設計・開発ツール | 製造サービス | サービスの具体例 |
PCB | KiCAD | プリント基板製造サービス | JLCPCB |
トッププレート | Inkscape | レーザーカットサービス | 遊舎工房 |
ボトムプレート | OnShape | 3Dプリントサービス | DMM.make |
マイコンソフトウェア | Thnnoy | – | – |
自作キーボード(第1版)の構想
今回作成するキーボードの構想です。概ね以下のような目的を実現したいです。
- おおよそ自作キーボードに搭載されうる一連の機能を試したい
- 失敗を前提として、あまり大きな手間・お金はかけない
各種機能の実装方法などを大まかに調べた上で、以下のような仕様のキーボードを作成することにしました。
- 主要機能
- キー入力
- マクロ
- ロータリーエンコーダ
- ディスプレイ
- RGB LED
- キー数
- 4個程度
- サイズ
- 名刺サイズ程度
小型のマクロパッドを作ることにしました。音量調節機能などのためにロータリーエンコーダを取り付け、押されたキーの情報などをディスプレイに表示することにします。
おわりに
今回は調査したキーボードの構造の概要、キーボードの種類を紹介しました。
調査したキーボードの情報をもとにして、あまり手間とお金をかけずに、試したい機能を一通り試すことができるマクロパッドを作ることにしました。
次回以降は実際に設計・製作していく過程を示していきます。
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